口輪筋の発達と進化
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2025.04.23 一覧

こんにちは。豊中(蛍池)の歯医者さん
小児歯科(子供)、妊産婦歯科健診も受診可能な【いけだ歯科】です。

今回は鼻に引き続きお口の周りの筋肉(口輪筋)の発達と進化についての豆知識です。

哺乳類は母乳を吸うために口輪筋をはじめとする顔面表情筋が形成されました。魚類や両生類、それに爬虫類では、口の裂け目に厚い皮が張り付いているだけですが、哺乳類の多くは、上唇と鼻は移行的になっています。多くの下等なサル(多くの原猿類:キツネザル・メガネザル)や哺乳類は、上唇が二つに分かれて中央がくっつかず濡れた鼻の一部が入り込んでいます(曲鼻)。しかも上唇は歯肉に移行し遊びがないので動かせないのです。
下唇は二つに分かれていませんがこの光景はウサギを想像すれば一目瞭然です。口唇裂のことを兎唇と言うことがあります。このような口唇では、まだ完全に陰圧を形成することはできません。ですから母乳を吸啜するというより、乳首を舌で舐めたり、しゃぶったりなどの飲み方になります。
その後、上唇が癒合するわけです。だから乳児は下唇の方が先に動くのです。乳児の口唇は、離乳初期では上唇が動かず、下唇の内側へ巻き込みが見られる。そして離乳中期では、嚥下時に上下唇が同時に薄くなったり、上唇による捕食も可能になります。上唇がめくれ上がり力がないのは、下等なサルと同じで上唇の機能が弱いことになります。これが高等なサル(ニホンザルなどの真猿類)になると、口唇が口の周囲を取り囲むようになります。ヒトの顔に人中があるのは、下等なサルの名残から来ています。類猿人では、さらに口唇が発達しとがらせることができます。そこで完全な吸啜が可能になります。ヒトの口唇の赤い部分を「赤唇縁」と呼びます。粘膜が薄いため血液が透けて見えるので赤い色をしています。これは皮膚と粘膜の移行部がめくれ上がったものでヒトの特徴になります。粘膜ですから感覚を敏感に感じることが出来ます。
さて顔面表情筋は、皮筋の一つとして発展しました。皮筋とはどんな筋肉でしょうか。
顔や首、それを胴に付いている筋肉で、片方が骨、他方は皮膚に付き収縮すると皮膚が動きます。ウマの脇腹にハエが止まると、皮膚を動かして追い払うのは皮筋のおかげです。動物の耳が動くのも、皮筋によるものです。またラクダやウマは、鼻腔を開閉することができます。顔面表情筋は、それぞれ独立したものではなく、複雑に筋繊維が入り込んだものです。口輪筋は、一体どこから来たのでしょうか?
爬虫類は、口が裂けているので獲物がこぼれ落ちます。そこで爬虫類では、頬袋として頬が形成されます。この時に頬筋も形成されたと思われます。
頬筋は、頬にだけある筋肉ではありません。その走行を見ると、まず左右頬筋の最上部と最下部は、口唇の上下を走っています。また、頬筋の中央で口角より上の繊維は、口角から下方に入り下唇に移行する。そのほか、口角挙筋は下唇に繊維を送り、口角下制筋は上新に繊維を送っています。これらの筋肉は、口を締めるように走行しているわけです。つまり口輪筋を鍛えることは、その周囲の筋肉を鍛えることにもつながる。
爬虫類から哺乳類への頬筋への頬袋の進化の理由として、硬いものをよく噛み、こぼさずに食べることは、頬筋や口輪筋の発達と関係が大いにありそうですね。柔らかい食物は簡単に咀嚼・嚥下できるので頬筋や口輪筋の発達にも影響することがいえます。このことも口呼吸の原因につながってきます。つまりよく噛むことは、顔面表情筋の発達と関係があるわけです。よくかんで表情筋を発達させ、ひいてはコミュニケーションを豊かにします。顔面表情筋は、骨を動かせる筋肉ではないが、人の心を動かせる筋肉といえるでしょう。

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