モンゴルでは、1~2月が最も寒く気温は-30℃ぐらいまで低下します。この気温だとバナナが凍り釘を打てることができます。写真のフィルムが硬くなり巻きにくくなるし、あくびをして涙が出ると一瞬で、凍って目が開きにくくなります。ガムは硬くなり、鼻毛は凍りバリバリします。
では、モンゴルの-30℃の冷たい空気を鼻から吸い込むと、咽頭部では何℃くらいになるでしょうか?
正解は、20℃まで上昇するのです。鼻腔の中は毛細血管が多いですし、それに甲介などで複雑に入り組んでいます。これは粘膜の表面積を増やすためです。鼻血が出やすい理由もそこにあります。鼻中隔前方のキーゼルバッハという場所がありますが、指を鼻に入れると触れる硬い部分で、ここは毛細血管が多く、鼻血の80%以上がこの部分からの出血です。
では、なぜ鼻腔には毛細血管が多いのでしょうか?
その前にインフルエンザはなぜ冬に流行するのでしょうか?インフルエンザのウイルスは乾燥に強く湿気に弱い。湿度とインフルエンザウイルスの生存率の調査では気温20℃、湿度60%の状態では、6時間後で5%しか生きられないのです。95%が死滅することになります。ところが、湿度30%の状態では、約50%も生き残ります。湿度が60%から30%に低下すると、ウイルスは10倍になるわけです。肺は、寒さだけではなく乾燥にも非常に弱い。冬に口を開けたまま歩いたり、走ったりすると肺が痛くなることが良くあります。それに肺炎になると、病棟では加湿器をおきます。
でも、どうして乾燥に強いのでしょうか?
ヒトの肺は魚類のえらが体内に入ったものでガス交換には、湿気が必要になります。このため鼻腔内では1日約1ℓもの水分が分泌されています。唾液の量とほぼ同じということになります。そのためは肺胞での湿度は、ほぼ100%になっています。冬の吐く息が白く見えるのも呼気の湿度が高いからです。鼻腔内で加湿されるから、鼻呼吸をするとインフルエンザに罹りにくくなります。一方、口呼吸では冷たい風や乾燥した空気が直接肺に入ります。鼻呼吸はインフルエンザの予防になるわけです。